黒ウサギ君主論

カテゴリー ハードな自作短篇小説

黒ウサギ

「なーキツネ、お前って女なの? 男なの? ちょっとで良いから確認させてくんねー?」

「触るなっ」

「いってーな。良いだろ、ちょっと確認するだけだって」

水城(ミズキ)はパンダの仮面を付けた少年の手をはねのけた。でっぷりと太っていて、パンダの仮面が計らずともしっくりとフィットしている。水城を取り囲んでいるのはパンダ、イヌ、フクロウの仮面を付けた三人組。顔を覆った仮面のため表情は見えないが、下卑た笑い声からその面の下に隠された卑屈な笑みは想像に難くない。

「来るな、このゲス野郎」

水城は図書室の一角に追いつめられていた。自由時間に読書をしているところを邪魔されただけでもうんざりなのに、その上、仮面まで取られたらシャレにならない。一週間前に “反省室” からようやく出られたばかりなのに、これ以上の面倒は御免だった。

「誰も見てねーから、大丈夫だって」イヌが飛びついてきて水城の右腕に絡み付いた。続けてフクロウが左手を拘束する。「やめろ! ふざけんな!」水城は抵抗したが、両手を塞がれていては身動きが取れない。パンダがキツネの仮面に手をかけた。水城は歯を食いしばることしかできない。

「おい、お前ら何してる」

パンダの手が止まった。

「……何だてめぇ、見ない面だな」

その少年は、黒いウサギの仮面を付けていた。少年にしては声が低く、未発達ながらも体には適度な筋肉が見て取れた。身長もパンダの少年より頭一つ分高い。

「今朝、入ったばかりだからな」

「邪魔すんな、新入りが」パンダが黒ウサギに飛びついた。パンダは温厚そうな見かけに反し、実は凶暴な動物なのかもしれない。以前、中国の動物園で檻に手を入れた男の手を食いちぎったパンダがニュースになっていたことを水城は思い出した。

でっぷりと太った体躯の少年は、パンダにしては俊敏な動きだったがウサギには敵わなかった。黒ウサギは実に手際よくパンダを後ろ手に拘束した。関節がきまったのか、パンダの少年が情けない悲鳴を上げた。

「離してやれ」

黒ウサギは息ひとつ乱さず、イヌとフクロウに命令した。イヌとフクロウはあっさり水城を解放し、パンダの少年と逃げるように図書室を出て行った。

「あの、ありがとう」

水城はおずおずと礼を言った。心からの謝礼など、よく考えたら生まれて初めて口にしたかもしれない。

黒ウサギの少年は、ああ、と気のない返事をして、開校以来誰も手に取ったこともないと思われる新品同様の、しかし威圧感のあるハードカバーを抜き取った。背表紙には『君主論』と書かれていた。

「ここは、あんな連中ばかりなのか」

水城は少し頭を巡らせてから「うーん、半々ってところかな。普通の中学校と比べれば、ああいう連中の比率は高いかも」と答えた。黒ウサギの少年は「ま、当然か」と小さくため息を付き、くるりと本棚に顔を向けた。

「あ、あの」水城は緊張しながらも勇気を振り絞った。「名前、教えて……くれませんか」

黒ウサギの仮面が、少しの間、無言で水城のキツネの仮面を見下ろした。

「素顔と同様、名前を明かすことも禁じられている。お前、新入りじゃないだろ。なのにそんなことも知らないのか」

「あ、そっか。キミはまだ知らないんだね。一応、生徒たちの間では仮の名前を付けて呼び合うことにしてるんだ。名前がないと、過ごしにくいから。先生たちもそれは黙認してる」

黒ウサギはまた少しの間、水城を見下ろした。

何の間だろう、これは。水城は不安になった。それから彼は「ハッ」と短く笑った。侮蔑的な響きが含まれていたので、嗤ったと表現する方が正しいかもしれない。

「すげーな。生徒に、先生か。お前、ここに来てどれくらいだ?」

「え……」水城は唐突にトゲを持ち始めた黒ウサギの口調に動揺しながら「二年だけど」と答えた。

「ってことは、ここに来た時はまだ小学生か。なるほどね。ま、その歳でこんなとこに収監されてるくらいだから、普通じゃねーわな」

黒ウサギの少年はくるりと背をむけ、すたすたと歩き出した。

「な、なに? どうしたの。待ってよ」水城は追いすがった。

「それ以上、オレに近寄るな」黒ウサギは低い声でうなった。大人のようにドスが効いていたわけじゃないけれど、その声はウサギよりもオオカミとかハイエナの仮面の方が相応しい、と水城は思った。

「俺はお前らみたいなのと友達ごっこするつもりは毛頭ない。だから仮の名前も必要ない」

水城は黒ウサギの仮面の少年の背中を呆然と見送った。

 

カウンセリングと反省室

「ってことがあってさ。なんかちょっと怖かったなー」

水城は二段ベッドの下で、足を崩して座っている。寝間着は全生徒に配布された少しゴワゴワしたジャージだ。もう二年以上になるが、このジャージだけは好きになれない。しかも今日はサイズが合っていないのか、すこし袖が余っている。

「パンダたちも毎回、芸がないな」上の段から掠れ声で、鈴木が言った。声変わりの真っ最中らしく、カエルの仮面をしているくせにガラガラ声だ。全くもって情緒がない。

「それにしても、黒ウサギの仮面か。それ、僕も見たよ」ベッドがギシッと揺れた。鈴木が寝転がったのだろう。

「え、そうなの?」

「ああ、同じクラスだった」

「じゃ、あの人も鈴木と同じで十五歳かぁ。もっと年上だと思った」

「だよな。彼の体、すごかったよ。体育の時に着替えてるの見たけど、ボクサーのライト級チャンピオンみたいだった。みんなキョトンだったよ」

「へぇぇ。いいなー羨ましい」

「水城は今のままが良いよ」

「やだよ、そんなの」

「その中性的な感じが、老若男女問わず、好かれる要因の一つであることは間違いない」

「もう、いいから。黒ウサギくんの話をしてよ」

「無愛想な奴だった。あと、バスケはうまかった」

「なにか話した?」

「いや、クラスの奴が話しかけてたけど、完全に無視されてたな。初日からあんな態度とるなんて、変わってるよ」

「名前は?」

「誰も聞けなかったんじゃないか」

「そんなぁ」

「水城は気になるのか?」

そりゃまぁ、と言いかけた時、けたたましい警報が鳴り響いた。

黄色だった室内照明が赤く点滅し始める。部屋の壁を這っていたクモ型の監視ドローンが一機を残して慌ただしく換気口に流れ込んでいった。

「久々だな、警報。一ヵ月ぶりくらいか」鈴木がのんびりとした様子で言った。ベッドから降りるつもりもないらしい。

「よくやるよね。そんなに反省室に行きたいのかな?」水城もあまった袖を折り曲げ、ゴワゴワと肌を擦るジャージに顔を顰めながら布団にもぐりこんだ。

「あんなとこ、行きたい奴なんていないだろ」

「鈴木は行ったことあるんだっけ?」

「二回。もう御免だね。それに、次は三回目だからシャレにならない」

「リーチかぁ。気をつけないとね」

鈴木は返事をしなかった。まだ警報は鳴り響いていて、照明も赤く点滅している。この状態ではさすがに寝付けない。水城は会話を続ける努力をした。「今回は誰だろうね」

「カラスとネコだな。賭けても良い」そう言って、鈴木は上で小さく咳をした。声変わりは大変そうだ。黒ウサギの彼も、こんな風に大変な思いをしたのだろうか。水城は顔も名前もわからない恵まれた体格の少年が、まだ少年らしい高い声でしゃべっているところを想像しようとしたが、それは当然のように上手くいかなかった。

「あぁ、たしかに噂になってたね」

「僕は二人がイチャついてるところも、脱走計画のことを話しているのも見た」

「鈴木は、変な気起こさないでよ?」

「ご期待に添えなくて悪いけど、僕は年上の巨乳で泣きぼくろがあるお姉様が好みなんだ。キミみたいなお子様にはこれっぽっちも欲情できない」

「自分だって子供のくせに」水城は口を尖らせたが、キツネの仮面が少しズレただけだった。ああ、忘れてた。水城は慌てて、仮面のロックをオンにし、目を閉じた。

警報はすぐに止んだ。

 

 

 

カウンセリングルームのドアをノックした。

「どうぞ」中から穏やかな大人の男の声が言った。

「失礼します」

水城は手首についたタグを認証装置にかざしてドアを開けた。プシュッという音と共に、ドアが横にスライドする。デスクトップ型の端末に高速で指を動かして何かを打ち込んでいる白衣姿の優男と斜めの位置に用意されたイスに腰掛ける。

男は手を止めてにっこりと微笑んだ。白い歯がキラリと光る。

「やぁ、今週の調子はどうかな?」

「上々です。何の問題もありません。柏木先生こそ、引き継ぎは落ち着きましたか?」

水城は社交辞令として質問を返した。

「はは、カウンセラーの私が心配されていては、世話がないな。前任の古野先生はずいぶんと熱心に生徒ひとりひとりと向き合っておられたみたいでね。カルテに目を通して経過報告するだけでまだいっぱいいっぱいだよ」

柏木はサラリと前髪を搔き上げた。そのセリフはプロとしてどうだろう、と水城は疑問に思わざるを得なかった。学園中の女子がこの優男に夢中だが、水城には全く理解不能だった。古野先生の白髪まじりの無精髭が恋しい。

「さて。それじゃあパパッと、今週の報告を頼むよ」

水城は不快感を声に出さないよう、極力事務的に、一週間の主な出来事、感情の浮き沈みについて報告した。ごちゃごちゃとくちばしを挟まれたくなかったので、黒ウサギの少年のことは割愛した。

「なるほどなるほど」柏木はコクコクと首を縦に振った。本当に内容を理解しているのかは不明だ。「問題なさそうだね。ところで、キミは今、恋をしているかい?」

「はい?」水城は相手に見えないのを良いことに、仮面の下で顔を思い切り顰めた。

「キミは今、十二歳だろう。それくらいの子供は、初恋に悶々とするものだよ。そういう悩みを、先生に打ち明けてほしい」

柏木が身を乗り出してきた。机の上に置いた手を握ろうとしたので、水城はすばやく引っ込めた。

「今のところ、そういう相手はいません」

「そうかい? でも、キミに想いを寄せる子はたくさんいるんだよ」

なにを言い出すんだろう。コイツは。

水城は背もたれギリギリまで後退しながら「そうなんですか」と言った。それ以外に言うべきことも見つからなかった。柏木は水城が下がった分だけ前のめりになった。怖い。

「じゃあ、私のことはどうかな?」

「はい?」

「私のことは、好きか嫌いかで言ったら、どちらかな?」

これは果たしてカウンセリングと言えるのだろうか。水城はもちろん嫌いですと即答したかったが、こんな密室で自分の二倍も背丈のある大人の男と敵対するのは得策ではないと考えた。目の前の男は、もはやカウンセラーどころか立派な脅威だ。はやくこの部屋から出たい。

「わ、わかりません」水城は自分の声が震えているのに驚いた。ダメだ泣くな。

柏木の腕がグッと伸びてきて、水城の腕を強い力で掴んで引き寄せた。水城は仮面越しに柏木の白衣に顔を押し付ける形で抱きすくめられた。苦しい。怖い。

「よしよし、怖がらなくて良いんだよ。僕はキミが何と言っても、キミのことが大好きだからね」

なんだコイツなんだコイツなんだコイツ。キモい。ヤバい。水城はもがいたが、柏木の腕はびくともしなかった。

「放してください」水城は叫んだ。

「ほらほら、暴れない。まったく聞き分けのない、いけない子だね」

突然、制服がまくり上げられ、裸の背中をひやりとした大きな手が撫でた。水城は全身の肌を粟立たせた。冷たさと恐怖で声が詰まる。

「そうそう、じっとして。いい子だ」

「やめてくださいっ」

プシュッ。

ドアの開閉音だと理解するのに、少しの時間が必要だった。モゾモゾと背中をまさぐっていた柏木の手が止まった。

「なに、やってんだ。あんた」この声。黒ウサギの彼だ。

乱暴に肩を掴まれ、柏木からひっぺがされた。柏木がドンッと突き倒され、イスごとひっくり返った。ガターン、という派手な音と共に、キーボードの配線が絡まったのかディスプレイやらマウスやらが柏木の上に落ちる。

「いてて……なんだキミは! いきなり入ってくるんじゃない」

逆上した柏木が胸の上のキーボードを薙ぎ払って立ち上がった。

「黙れ、変態ヤローが」黒ウサギの少年は舌打ちした。「くっそ、カウンセラーまでこんなんかよ。どうなってんだ」

「邪魔するんじゃないっ」柏木が少年に手を振り上げていきなり殴り掛かった。少年は軽やかにその一撃をかわし、ボクシングのプロモーション動画のように綺麗なカウンターを決めた。柏木がのけぞり、もう一度派手な音を立てて後ろに倒れ込んだ。カンカンカン。KO勝ち。

「あんた、大丈夫か?」

「あ、ありがとう」水城は寒くもないのに歯が鳴るのを止められなかった。

「またお前か。キツネのくせに、厄介だな」黒ウサギの少年はため息をついた。

「キツネのくせにって?」

「キツネってのは普通、人を騙したり危害を加える側だろ。なんでお前はいつも、やられる側なんだ」少年は面倒くさそうに言った。

「あは、似合わないですよね」

「知るか」

黒ウサギの少年が踵を返したのと同時に、騒ぎを聞きつけた『先生』たちが狭い個室になだれ込んできた。

 

 

黒ウサギの少年は反省室に連れて行かれてしまった。水城がいくら追いすがって何があったか説明しても、『先生』たちは聞く耳をもたなかった。そして悪いことに、事実として柏木はノックアウトされて意識を失っていたし、黒ウサギの少年も諦めたように抵抗を示さなかった。カウンセリングルームには監視ドローンが入れないため、映像記録もない。

彼に、謝らなければ。

水城は机に沈み込んだ。水城ひとり、授業に戻されたが当然のようにそれどころではない。英語の『先生』が何やら自己満足気に英文を音読しているが、いつも以上に右から左だった。盛大に肩を落としたその時、右から丸めた紙が投げられ、開いたままのテキストの上にポトリと落ちた。

右を見ると、コアラの面がこちらを向いていた。

紙を広げた。ノートの切れ端で、 ” なんか落ち込んでる? ” とだけ書かれている。

水城は紙を裏返し、” カウンセラーの柏木に襲われた ” と書いて投げ返した。

コアラはそれを広げ、バッとこちらを向いてから、慌ただしくまたノートの端を破って何かを書きなぐった。

” 詳細希望 ”

” いきなり襲ってきた。でも助けてもらった ”

” 誰? ”

” 黒ウサギ、2つ先輩 ”

” こないだ入ってきた、新入り? ”

水城は頷いた。コアラも頷いた。その意味はよくわからなかった。

” でも、柏木なぐって反省室に連れてかれた ”

コアラはそれを見ながら、なるほどね、と言うように首を三回縦に振った。なにか助けてくれるかと期待したが、コアラはそれっきりなんのアクションも返してこなかった。所詮は、噂好きのクラスメイトに過ぎない。しかしこの噂が広まれば、黒ウサギの彼への批評的な視線も減るかもしれない。彼が喜ぶかはわからないが、嫌われているよりも好かれている方が良いに決まっている。水城はとりとめもなくそんなことを考えて、残りの授業をやり過ごした。

 

 

シャワーを浴びて寮に戻ると、部屋の電気が消えていた。部屋の壁や天井を、監視ドローンの赤いライトがもぞもぞと動いている。窓がない分、廊下よりも少しだけ暖かく感じる。寮の屋内は反省室を除き、全フロアが常に二十六度に保たれている。

鈴木はまだ戻っていないのだろうか。

それは珍しいことだった。鈴木は大抵、授業後の『仕事』をせずに(古株カエルはクラスでもそれなりに敬意を払われているらしかった)戻ってきてはベッドで後輩から貢がれた菓子パンを頬張りながらネットゲームに勤しんでいた。

しかも今日は『先生』に黒ウサギの少年の件で抗議したので、いつもより三十分ほど遅くなった。もう十分ほどで『夜』になる。夜は外出禁止だ。部屋のドアは自動的にロックされるし、外に出ることは固く禁じられている。何をやっているんだろう。水城は気をもんだ。自分でリーチだからと言っていたじゃないか……

いや、まぁいいか。

水城は思った。よく考えたら、鈴木の刑期が伸びても水城は特に困らない。それどころか、彼が出て行って、気の置けない友人との学園ライフが終焉するのは望ましくなかった。もし新しくやってきた奴が変な奴だったら最悪だし。彼にはずっと同室で居てもらいたい。

それにしても、黒ウサギの彼を反省室から出してもらうために古カエルの知恵を借りたかったのに。水城は肩を落とした。この調子で肩を落としつづければ近いうちにコーラー瓶くらい急角度のなで肩になってしまうだろう。水城はスリッパを脱いで電気を付けた。

パッと部屋が明るくなり、二段ベッドと二つの勉強机、テレビ、小型冷蔵庫が現れる。十畳一間の、シンプルな空間。この種の施設にしては充実しすぎている設備だが、水城がここに来る前に過ごしていた部屋と比べれば犬小屋同然だった。しかし特に不満はない。毎日、授業に行っている間に部屋は掃除され、冷蔵庫には数種類の飲み物のペットボトルが補充され、ベッドのシーツと衣類は洗濯済みのものと取り替えられる。

未成年者が健やかに生活するには充分すぎるほど、行き届いている。

水城は水が滴る髪をサッと拭き、机にタオルを放り出して振り返った。そこで、二段ベッドの上の段が盛り上がっているのに気が付いた。

「なんだ、鈴木。いるなら声かけてよ」

返事はない。水城は少し訝しんでから、二段ベッドのハシゴに手をかけ、登った。カエルの仮面を上に向けて横たわっているのが見えた。

「……寝てるの?」

そこでふと、枕の位置が上すぎる気がした。鈴木の体はベッドの縦幅いっぱいに、盛り上がっている。

あれ、鈴木ってこんな身長あったっけ?

そう思った瞬間、バッと掛け布団がはねのけられ、カエル仮面が体を起こして水城の腕を強い力で掴んだ。昼間のカウンセリングルームでの柏木の手の感触がフラッシュバックした。

「うわっ」水城は腕を満身の力を込めて振りほどき、思い切り仰け反った。ハシゴから落ち、肩と頭をしたたか打った。しかし痛がっている場合ではない。水城は急いで身を起こし、部屋のドアに体当たりするようにぶつかって廊下に転び出た。

振り返ると、ドアの隙間からカエルの仮面がちらりと見えた。追ってきている。

水城は駆け出した。裸足の足が冷たいタイルを蹴ってピタピタとマヌケな音を立てた。まだ『夜』ではないので廊下の照明は煌々としている。しかしさすがに人影はない。みな、部屋で寛いでジュースを風呂上がりの牛乳を一杯やっている時間だ。

後ろから、自分のとは別の足音が追いかけてくる。

足にはあまり自信がない。このままではすぐに追いつかれるだろう。仕方がない。悩んでいる余裕はない。

水城は突き当たりを曲がり、意を決した。縦長の頑丈な、窓の付いていない鉄扉が五つ。一番手前の扉だけが締まっている。扉は黄色く塗られているが、その禍々しさは隠しようがなかった。水城は締まっている扉の隣の部屋に飛び込み、内開きの扉を叩き付けるように閉めた。視界が真っ暗になると同時に、ガッチャン、という重々しい音と共に扉がロックされた。反省室の鉄扉は、閉めると同時にロックされる。そして、ロックを解除できるのは『執行官』だけだ。

ジジッという音と共に、ないよりはマシだろうと言わんばかりの薄暗いオレンジ色の照明が付いた。部屋は三畳ほどの大きさで、隅に薄汚れた便器がむき出しで備え付けられているだけだった。床も寮の部屋と違ってむき出しの鉄板だ。奥の壁には大人の腕ほどの太い鉄格子が嵌っており、外から冷たい外気が流れ込み、壁や床の鉄板をキンキンに冷やしている。

水城はへたり込んだ。

足音は聞こえない。扉を叩いたりと無駄な音を立てる気もなさそうだ。

とりあえず、これで安全だ。鈴木と同じカエルの仮面を付けた柏木に体をまさぐられる心配はしなくていい。

しかし。

いかんせん、寒い、冷たい、固い。水城は自分の肩を抱き寄せた。こんな薄着で、しかも裸足だ。ずっと床に足を付けていたら凍傷になるかも。鉄格子の隙間から監視ドローンが出たり入ったりしている。

「悪いけど、NANGAのシュラフとオマンヒニのホットココア、それにクラブハウスサンドをお願い。ああ、パンは片面を軽く焼いてね」

しかしドローンは不気味な足でカツカツと鉄板を鳴らし、赤いライトの目で水城を監視するだけだった。「キミ、ジョークを言ったんだから、せめて反応くらいしてよ」

水城は虚しい独り言をやめてため息をついた。あーあ。今日は柏木のせいで散々だ。

「おい」

声が聞こえた。隣からだ。そう、隣の反省室。ほかの扉は開いていた。つまり、一つだけ閉まっていた扉の向こうにいるのは。

「は、はい」水城の声は緊張で無様に裏返った。

「……またお前か」聞こえるはずのないため息まで聞こえそうだった。

「すみません……」

「お前、何かあったのか」

走ってきた足音が聞こえたのだろう。

「ええと、ちょっと。不審者に追いかけられて……というか、部屋で待ち伏せされてて」

「なんなんだ、お前。賞金でも掛けられてんのか」

「あはは、かもしれないですね」

「あの変態ヤローか」

「はい」

沈黙。聞こえないが、舌打ちしているのかもしれない。

「あの」水城が言った。何かしゃべっていないと、不安でしかたなかった。こんな格好でこんな場所で眠ったら、もしかしたら朝には凍死しているかもしれない。それはあながち考え過ぎとも思えなかった。

「なんだ」

「こないだと、それに今日も、ありがとうございました。それと、ごめんなさい」

「なんで謝る」

「あなたが反省室に入れられちゃったので」

「別に、お前は悪くないだろ。それとも、邪魔しちゃ悪かったのか?」

「そんなわけ」声が驚くほど響き、思わず口を抑えた。「ないじゃないですか」

「あ?」

「とにかく、助かりました」

「あぁ」面倒くさそうな返事が返された。

「あの」

「なんだ、うるさいな」

水城は頭を巡らせた。何を質問すれば良いだろう? 聞きたいことがたくさんあって、考えがまとまらない。

「どうして、いつも助けてくれるんです?」

「どうして? ……さあな。理由なんて考えたこともない」

「困っている人がいたら、誰でも助けるんですか?」

「そんな良いヤツに見えるか」

「見えます」水城は即答した。

「ははっ、お前、変わってるな」

「そうですか?」

「そうだよ。名前もなく顔も仮面で隠したオレなんて、ただの愛想の悪いガキだ。なんの価値もない。別にそう思っていなかったわけじゃないが、ここに来て確信した」

「そんなことないです。あなたはすごく、勇気があって、強くて、かっこいい人です」水城は声が震えた。寒さで震えたのかなんなのか、自分でもよくわからなかった。

「……どうした」

「い、いえ。ちょっと寒くて」

「そう言えばお前。毛布も何もないんじゃないか?」

正式に『執行官』に連れてこられた場合、冬はそれなりの装備が与えられる。体を壊されたり死なれたりしたら、彼らも困ると言うことだ。

「ええ、実はそうなんです」カタカタと歯が鳴った。

「服は?」

「ジャージだけ」

「バカ、お前……いま何月だと思ってんだ」

「十一月」

「冬の北海道なめんな」

「なめてるわけじゃないんだけど」

苦笑いしたいのだが、カチカチと歯が鳴ってうまく声が出ない。濡れたままの髪がどんどん体温を奪っていく。朝にはつららみたいに凍り付いているかもしれない。

「ドローンは?」

「いるけど……」ドローンは基本的に映像を記録するだけだ。規定外の行動を取った『生徒』を認知した場合のみ、監視センターに通報が行われる。

「一匹、捕まえて壊せ」

「ええ、む、無理だよ、そんなの」

水城はうろたえた。たしかに。ドローンを壊せば警報が鳴り、ここにも大人たちが駆けつけるだろう。しかし、ドローンも簡単に壊されてくれるわけではない。もし攻撃をかわされたら、即座に反撃してくるだろう。電気ショックで気絶させられるだけでも怖いが、いまここで気絶することは死を意味する。しかも悪いことに、水城はドローンを捕まえられるほど俊敏ではない。体育の成績はだいたいDだ。しかも、すでに寒さで体が思うように動かない。

「オレは手足が拘束されてて動けない。やれ」

手足を拘束? 反省室に閉じ込められるだけではないのか。鈴木はそんな話をしていたか? 水城は違和感を覚えたものの、とにかく体が動くうちに行動を起こそうと立ち上がった。

ドローンは特に警戒する様子もなく、格子を橋渡りして遊ぶみたいにカチカチと動きつづけている。集中しろ。刺激しないように近づいて、一気に叩き潰す。

水城はジリジリと近寄った。ドローンとの距離が一メートルになった時点で、ドローンは動きをピタリと止めた。ジッと、赤いランプを点灯させてままこちらの様子を伺っているようだ。本当に、生き物みたいだった。命のやり取りと行こうじゃないか。水城は唾を飲んだ。そして手をそっと持ち上げた。

途端に、ドローンはササッと動き、目にも留まらぬスピードで格子の向こう側に逃げてしまった。

水城はへたり込んだ。

「おい、どうした」

「逃げられました」

無言。また舌打ちをされたかもしれない。水城は冷たい壁に背をもたれかけ、足を抱いた。こうして小さく丸まって過ごせば、もしかしたらやり過ごせるかもしれない。水城は震えた。孤独と、寒さと、恐怖に。

 

 

警報に次ぐ警報

 

しばらく時間が経ち、水城はいよいよ睡魔と戦うのに疲れ始めていた。もういっか、寝ちゃおうかな。いや、もう寝ちゃっていて、これは夢かも。

 

ファーン、ファーン、ファーン。

遠くで警報が鳴っているのが聞こえた。いつの間にか閉じていた目を開けると、薄ぼんやりしたオレンジの照明が、赤く点滅していた。なんだろう。水城はぼんやりと考えた。ああ、また誰かが脱走でもしたのだろうか。

カラスと、あと、誰だっけ……まぁいいや。どうでも。

 

目が覚めると、まず最初に白い天井が見えた。首を回すと、変な姿勢のまま夢中で漫画を読み耽った後みたいに、ギシギシと痛んだ。天井と同じ、白いカーテン。白くて清潔な、柔らかいベッドに、水城は横たわっていた。

体を起こした。

助かったんだ! 良かった。ベッドを囲んでいたカーテンを引くと、見慣れた医務室の風景が飛び込んできた。窓の外は、まだ真っ暗だった。

夜? 夜まで寝ちゃったのかな。

水城は首を傾げた。

「あら、もう目が覚めたのね。朝まで起きないと思ったわ」

医務室のオバちゃんが、湯気の立つカップを持って隣の控え室から入ってきた。

「あの……」

「全く、そんな格好で反省室に篭城なんて、無謀にもほどがあるわ。柏木先生に襲われる方がよっぽどマシよ。命までは奪われないでしょうし、というか、わたしは柏木先生に襲われたいわぁ」

カラカラと笑った。レイプされかけ凍死しかけた未成年者の前で吐くにはデリカシーが無さ過ぎるが、不思議と嫌な感じはしなかった。カラッと晴れた秋の日みたいな、不思議なオバちゃんだった。

 

「そっちの子が起きたら、ちゃんとお礼、言いなさいね」

オバちゃんは隣のベッドを目配せした。カーテンで囲まれていて中は見えない。

「手錠と足かせを無理矢理ちぎろうとしたみたいで、傷だらけなのよ。肩も脱臼してるし……」オバちゃんはそこで言い淀んで、眉を寄せた。「とにかく、処置はしておいたから。二人とも、朝までここで反省していること。反省室よりはずいぶん良い環境だけどね」

オバちゃんは返事も聞かず、明かりも消さずにさっさと出て行った。

水城はそろそろとベッドで居住まいを正し、小声で声をかけた。

「あの……」

返事はない。眠ってるのかもしれない。

「すいません」もう一度、小声で呼びかけるが、やはり返事はなかった。

水城は少し迷ってから、もう一度、ベッドに潜り込んだ。そして体を横にして、カーテンで覆われた隣のベッドに顔を向けてしばらく見入ってから、そのまま眠った。

 

 

キミの名は

翌日、カウンセラーの柏木は公には「個人的な事情」のため急遽辞職したとアナウンスされた。後任はまだ未定らしい。水城は変態がクビになったこととしばらく面倒なカウンセリングから解放されたことを大いに喜んだ。

鈴木は『先生』たちの捜索ですぐに発見された。カエルの仮面を剥がされた状態で、部屋のウォークインクローゼットの中から出てきた。薬品をかがされ、ガムテープでぐるぐる巻きにされて眠っていたらしい。

自由時間。水城は図書室に足を運んだ。朝、目が覚めると隣のベッドはもぬけの空だったのだ。彼が起きだしたことにも気付かず、安心しきってぐーすか眠りこけた自分にほぞを噛む思いだったが、慚愧の念に押しつぶされてる場合ではない。きちんと礼をしたい。

図書室は静まり返っていた。

誰もいないのか、と思ったが、奥の読書灯が一つ、付いているのに気が付いた。緊張に息を詰めて向かうと、黒ウサギの仮面を付けた少年がぽつんと一人、本を読んでいた。

「あの」

「静かにしろ。図書室だ」

黒ウサギは顔も上げずに言った。しかし、水城はもう怖いとは思わなかった。

「良いじゃないですか。他に、誰もいないし」

「オレがいるだろ」

「……あの、大丈夫ですか。怪我」

少年の制服の袖からは、手首の痛々しい包帯が覗いていた。よく見ると、足首から見えているのも靴下ではなく包帯だった。

「あぁ」うるさそうに、それだけ言った。

「ドローン、どうやって壊したんですか?」

「お前が逃がしたやつがこっちの部屋に入ってきたから、足で叩き潰した」

「手錠と、足かせされた状態で?」

「お前とは違うんだ。それくらいのハンデ、なんでもない」

「……三回、あなたに助けられました。まだ一週間なのに」

「一週間で三回か。普通の人間は、そんなハイペースで危機に見舞われないんだけどな。お前、呪われてるんじゃないか」

「アハハ。これでも、カウンセラーに襲われたり凍死しかけたりしたのは、人生初です」

「どうでも良い。疫病神はとっととどこかへ消えてくれ。これ以上、怪我をしたくない」

水城はしゅんと肩を落とした。

「ごめんなさい。それに、ドローン壊したペナルティまで」

「お前が謝ることじゃない、と言いたいところだが……そうだな。一度くらい謝ってもらおうか」

「ごめんなさい」

「土下座しろ」

「え?」

「そこで良いから、土下座して」

何それ? そんな流れじゃなかったじゃん。水城は困惑したが、しかしここで土下座しないというのも何だか負けた気がして嫌だった。くっそー。もう二度と謝るもんか。そう固く心に近いながら、ぎくしゃくとした動きで、水城はその場で正座して手を付いた。

「怪我させて、ペナルティで刑期延長も……取り消してもらえませんでした。ごめんなさい」

「うん、いいよ」少年の声が頭上から振ってきた。

顔を上げ、パンパンと膝を払った。

「ねえ。やっぱり名前、教えてよ」

「いきなりタメ口か。オレは年上だぞ」

「収監されてからの年数で言えば、こっちの方が先輩だよ」

「なるほど。第五種未成年者刑務所。特殊な事情の未成年犯罪者専用とは言え、歴とした刑務所ということか。たしかに、年齢など関係ないかもな」

「そういうこと。あ、でも敬語は使わなくていいよ」

「当たり前だ。誰に向かってものを言っている」

「誰?」

黒ウサギはようやく、本から顔を上げた。それから頭をガリガリと掻いた。

「クボタで良い。お前は、ミズキだったか」

「うん。水城あかね。よろしく」

クボタは少しの間動きを止めた。

「女だったのか?」

「フフ。女の子のファンが減っちゃうから、みんなには内緒ね」

「お前……やっぱキツネの仮面、似合ってるよ」

 

 

編集後記

学園もののラブコメに憧れて、書いてみました。ただの学園ものじゃつまらないから、ちょっと設定を捻りました。生徒はみんな仮面を付けていて、本名も明かせない。全寮制で、部屋割りは男女関係なく “ある基準” で機械的に決められています。学園内は教室もお風呂も個室もトイレも関係なく、常時、クモ型の監視ドローンが這い回っている。

思ったより筆が進んで、書きやすいお話でしたー!

 

<プロットメモ>仮面学園のラブストーリ。

■舞台設定

・少年法の改正で未成年犯罪者の身元は公にされる。しかし一部の特権階級の子供たちに限って、厳格に秘匿されている。学園の正式名称は「第五種未成年者刑務所」。

・互いに顔を見せることを禁じられている。

・収監された未成年者たちは「カウンセリング」「矯正教育」「懲役」。学園は北海道の山奥にあり、世間とは隔離されている。

 

■キャラ設定

水城:12(女)。キツネの仮面。小学5年生の時に収監。寂しがり屋で、嘘がつけない。先生には可愛がられている。

久保田:15(男)。黒ウサギの仮面。自分にも人にも厳しい。重い自責の念を負っている。日常的に体を鍛えており、趣味は読書。正義感が強い。

パンダ、イヌ、フクロウ:12(男)。収監されて半年。水城には好意からちょっかいをだしている。

鈴木:15(男)。カエルの仮面。水城より前から学園にいる。

柏木:28(男)。変態カウンセラー。

黒ウサギ君主論” への4件のフィードバック

  1. こんばんは矢戸です。通りすがーる。

    まず総評。一番最後にある設定は面白そうなのにもったいない。一番最初に持ってくるべき。例えば、以下参考。


     水城は図書室の一角に追いつめられていた。仮面をつけた男子たちに。
    「なーキツネ、お前って女なの? 男なの? ちょっとで良いから確認させてくんねー?」
    「触るなっ」
    「いってーな。良いだろ、ちょっと確認するだけだって」
     水城(ミズキ)はパンダの仮面を付けた少年の手をはねのけた。でっぷりと太っていて、パンダの仮面が計らずともしっくりとフィットしている。水城を取り囲んでいるのはパンダ、イヌ、フクロウの仮面を付けた三人組。顔を覆った仮面のため表情は見えないが、下卑た笑い声からその面の下に隠された卑屈な笑みは想像に難くない。
    「来るな、このゲス野郎」
     水城はこのケダモノたちにうんざりしていた。自由時間に読書をしているところを邪魔された上に、仮面まで取られたらシャレにならない。一週間前に “反省室” からようやく出られたばかりなのに、これ以上の面倒は御免だった。

    (=1シーン終わってから、舞台設定を入れる)

     水城のいる場所――通称ゴミショ。学園の正式名称は「第五種未成年者刑務所」。少年法の改正で未成年犯罪者の身元は公にされる。しかし一部の特権階級の子供たちに限って、厳格に秘匿されている。互いに顔を見せることを禁じられている為、少年少女全員が仮面を装着。収監された未成年者たちは「カウンセリング」「矯正教育」「懲役」。学園は北海道の山奥にあり、世間とは隔離されている。

     1.上のような始まりもいいですが、逆に狐の仮面をかぶった水樹が『受刑者番号』をつけて写真撮影しているシーンで始まってもいいなと思いました。12歳なのに、一体何をして少年院に入ったのか、など。
     2.副詞副詞。小説作法P141で『例えば「彼はドアをばたんと閉めた」。(中略)それにしても、「ばたんと」はどうしても必要だろうか……(省略)』とあり、徹底的に(あっこれも副詞ですね)排除している。副詞はどうやら高等テクニックな側面があるようで、「ばたんと」一言で彼の心理描写や皮肉を説明できるならつかってもいいけど……なくても問題ないよね、という話。
     3.監視ドローンはいい役割を果たしている。私がこの話で中長編を書くなら、監視ドローンを改造する少年とかだして、後々大人たちの監視する側に回したりします。ハイテク機器があったら、やっぱり使ってみたいのが心情なので。
     4.黒ウサギが連れていかれて、水城が机で沈み込むシーンの間に、叙述がない。突然教室に行ってしまい、混乱してしまう。一言でも「水城は教室にいた」と言えば、簡単でも通じる。
     5.少年少女が刑務所に入る話といえば、「デッドマンワンダーランド」
     6.基本的によくできている。設定も面白いし、黒ウサギも女子受けがいいと思う。だったらここでは1から100にするコメントをするべきだろう。

    >学園もののラブコメ
    >ショートショート1000本ノックに関して
    >長編小説の書き方とライブ型・プロット型、そして執筆体力。

     この3つに関して言及します。

    >学園もののラブコメ
     「学園ラブコメで一番大事なものは何ですか、先生?」
     「極上の会話」
     以上、説明終了。だとしたら味気ないので、簡単な言及を。
     小説である以上、描写をしなければ、登場人物を示す最強のツールは「会話」となります。設定って事もありますが、いずれにしろ主人公とかに設定を語らせないといけないので、会話があった上で設定が生きてきます。例えば、「今日、会社休みます」で、
     「彼氏いるの?」と聞かれて、「マモルって彼氏がいるの」という主人公が家に帰ってきて、ペットのマモルに対して語り始める。マモルって犬なの……。
     主人公がペットの名前を使って彼氏がいるのだと、見栄を張っている人間なのだとわかります。夫婦漫才バンザイ!

    >ショートショート1000本ノックに関して
     はっきり言おう。ショートショートは地獄。星新一の本を読破した事がない。ショートショート1000本ノックするぐらいだったら、「好きな主人公で1000人の登場人物と会話した話」のほうが1000倍生産的。
     小説で疲れるのは「視点移動」(この例外に「群像劇」ってのがありますが、それは別の話)で、状況が理解できなくなると疲れる。私はルフィの話がみたいのに、海軍将校の話し合うシーンなんていらなかったりする。(個人的に好きなのはサンジですけど)

    >長編小説の書き方とライブ型・プロット型、そして執筆体力。
     告白します。私は今まで長編小説が書けませんでした。なぜか。
     書くのが気持ちよくなかったからです。
     小説書く人間が一番大事にするのはこの「書き続ける意志」です。村上春樹さんもおっしゃっていましたが、小説はわざわざ遠回りな事をしているんです。賢い人間なら、スパっとズバッと一言言いたい事を言えば終わりじゃないですか。じゃあなぜ遠回りするのか。遠回り=物語が好きだから。
     書き続ける意志を持ち続けるには、書くのが気持ちよくなるのがいちばんイイ。これを執筆体力なんて読んだりしています。この執筆体力があれば、「プロット」は無用の長物になります。マジで。プロットがマジいらないかって言われると、そんな恐ろしい事口が裂けても言えない。「プロット」は「ドラえもんの四次元ポケット」みたいなもので、便利すぎるんですよ。扱いに困る。詳しく知りたいと思ったら、コメントください。
     長くなったので今まで文章を一行にまとめます。
    「毎日1000字書け。でも週一回ぐらい休んでもいいわよ」
     これ。
     因みに何を書けばいいのか。いろいろあります。一番いいのは自分が書いていて面白いもの。なんでも構わん。エロイのでもいいし、BLでもいいし、面白さは真理なので。夢日記でもいい。散歩途中に駐輪場でランチを食べていた、しがない中学生の描写だっていい(実話。私ではないです)今日一は、マンションの扉に引っかかった野良猫ですかね(自転車の私を見てビビったみたいで、ドアの隙間に引っかかっていた)。
    「小説上達にはよく読み、よく書け」と言われています。私はもっと明るく言いたい。「たくさん書けば、たくさん読めるようになって人生楽しくなるよ」っていいたいです。どんなふざけた内容だって小説のネタになりますから、生きているのが少し楽になります。 
     長文失礼致しました。この辺で終わりにします。
     最後に一言。
    「毎日1000字書け。でも週一回ぐらい休んでもいいわよ」
     私はこれしか言わん。
     
     ではお休みなさいませ。

    1. >矢戸だいはちさん
      いつもありがとうございます。
      設定がイマイチ生かしきれてない感は、確かにおっしゃる通りですね。タイトルの「君主論」も、気づけば全然本編とは関係ないし(笑
      ラブコメの会話描写って難しいな〜

  2. ラブコメのコツは、夫婦漫才です。だからどっちかがツッコミかボケに回ればいいんです。ツッコミかボケのどっちが難しいかと聞かれれば、圧倒的に「ボケ」です。

    この話の場合、ミズキか黒ウサギのどちらが「ボケ」かって聞かれれば、黒ウサギかなぁと思います。黒ウサギは、少女漫画の「黒崎くんの言いなりになんてならない」の黒崎くんキャラなのかって思います。いわゆるドS。余りしゃべるタイプでもなさそうだし、筋肉は多いから、筋肉ボケでいくか。例えば、

    「水城、お前は少し筋肉をつけた方がいい」
    「何よ、いきなり」
    「『クモ』も潰せないようなら、これから先、思いやられそうだからな」
    「……で、何するの?」
    「腕立て伏せ」
    黒ウサギは床を指差し、ここでやれとジェスチャーした。水城は腕立て伏せをしてみる。だが、1回も上がらない。
    「……嘘だろ」
    「だ、だって体育Dだもんっ!」
    黒ウサギは水城の膝を地面に付かせ、水城の肘を手でつかむ。「え……」
    「いいか、腕立てっていうのはな……」
    (か、顔ちが近いんですけど――っ!)

    なんかご馳走様みたいな、ラブコメになってしまった(´・ω・`)

    1. ごちそうさまですw
      あー、恋ってそんなんだよねって思い出しました。

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