猫と宅急便
お届けもの
芋嵐がびゅうびゅうと吹き、窓ガラスを鳴らしている。窓は全て曇りガラスになっているので、タワーマンション四十一階からの絶景はベランダに出なければ拝めない。部屋の床には脱ぎ捨てた服やポテトチップスの袋、ブー助の抜け毛が散乱している。
そろそろ、週に一度の清掃業者が来る頃合いだ。
郁美はアーロンチェアの上でかいていたあぐらを解いて、足をおろした。ビリビリと不快な痺れに顔をしかめ、ぶよぶよと弛緩しきった太ももの贅肉を見て眉間のしわを深くした。メインクーンの三毛猫、ブー助がドアの隙間からのしのしと入ってきた。床に散らかった食べ残しなどを食べているらしく、猫のくせに中型犬くらいの大きさになっている。長い毛足もよりいっそう、ブー助を巨大化させて見せていた。土佐犬と戦っても良い勝負をしそうだ。
四つのモニターに表示された外貨相場のグラフは問題なく推移し、郁美に一定の富をもたらしつづけている。しかし自分の身体だけは思うようにならない。食べるのは我慢できないし、筋トレも成果が出るまで続けることができない。
足の痺れは大分マシになった。ディスプレイの電源を落とすと、そこにぼんやりと自分の顔の輪郭が映し出され、郁美は目をそらした。だぶついた顎を撫でながら立ち上がると、男用のLLサイズのスウェットを踏みつけた。五日間着つづけた臭いぶかぶかのスウェットを拾い上げ、郁美はそれをすっぽりと被った。醜い体が視界から消え、自分の饐えた体臭が鼻をついた。
プルルルル。マンションのエントランスからの呼び出し音だ。郁美はのしのしと体を左右に揺らして歩き、インターホンのディスプレイを覗き込んだ。宅配業者の制服を着ている。そこで郁美は、昨晩ネットショップで注文した新作ゲームのことを思い出した。そうか、あれか。
郁美は通話ボタンを押した。
「お荷物のお届けに参りました!」
若い男がカメラのレンズに満面の笑みを近づけ、ハキハキとした声で言った。いつもの小汚い中年男ではなく、初めて見る顔だった。めちゃくちゃイイ男だ。
郁美は無言のまま解錠ボタンを押した。そしてスウェットを脱ぎ捨てて脱衣所に向かい、シャワーを頭から浴びながらボディーソープを体と頭にこすりつけた。二十秒ほどでシャワーを終えると、全裸で脱衣所の収納棚を開き、まだ袋に包装されたままの白いタオルとバスローブを取り出した。
ピンポーン。玄関チャイムが鳴った。
まずい。郁美は乱暴にビニールの包装を破き、ギシギシの髪をタオルでくるんでバスローブを着て、玄関に向かった。ついてこようとするブー助は脱衣所に閉じ込め、玄関の靴箱を開け、中に入れてある使い捨てマスクを一つ取り出して装着する。
覗き穴から覗くと、先ほどのいい男が小脇に段ボールを抱えて立っていた。郁美は後ろを振り返った。普段はリビングと書斎とトイレとキッチンしか使わないのでこのエリアは清潔そのものだった。業者が完璧に清掃していった時のまま、維持されている。何も問題はない。
郁美は玄関を開けた。男がにこやかに挨拶した。
「どうも! お荷物をお届けに参りました」
背が高い。百八十センチはありそうだ。顔はちらっとしか見ることができなかったが、かなり整っている。はっきりとした大きな目に太い眉、高い鼻筋はスッと通っていた。男は段ボールの上に受領書を乗せ、胸ポケットからボールペンを取り出した。
「こちらにサインをお願いします」
郁美は勇気を振り絞って一歩近づいた。男の少し埃っぽいにおいがして、心臓が高鳴った。郁美は自分のハムみたいな手を差し出してペンを受け取ったが、その時、男の浅黒い骨張った指に触れてしまった。びっくりしてペンを取り落とす。
「すみません」男は謝って片膝を折り、ペンを拾った。「ご、ごめんなさい」郁美は蚊の鳴くような声で言い、ペンを受け取った。男と郁美の距離は段ボール一箱分、三十センチくらいだ。郁美の手とペンが紙に触れている間、男はがっしりした長い腕で力を込め、下から支えた。郁美はいつもより丁寧に、自分の名字を書いた。
「お風呂上がりですか?」
「はい」郁美は返事をしながら小さく頷いた。
「風邪の時は、早めに乾かした方がいいですよ」
何を言っているのだろう、と思ったが、すぐに自分がマスクをしていることを思い出した。顔を見れない。郁美は男ののど仏を見た。「そうですね。ありがとうございます」ペンを段ボールの上に置いた。
男はペンを胸ポケットに入れ、「お大事に」と段ボールを差し出した。郁美はそれを受け取り、お辞儀をした。ドアがしまる。
荷物を下に放り出して覗き穴に飛びついたが、男の姿はすでに見えなくなっていた。郁美はマスクをはぎ取ってその場に捨て、踞った。腹の肉がギュウッと圧迫されて苦しい。ドシンと尻餅を突き、ピカピカの玄関に裸足を投げ出して荷物を見つめた。動悸が少しずつ治まってくる。もっとしっかり顔を見ておけば良かった。郁美は後悔した。
ピンポーン。
郁美はバッと顔を上げ、マスクを拾って装着し、覗き穴を見た。いつもの、三人の清掃業者だった。郁美はため息をついて鍵を開け、三つある寝室の一つに入って鍵を閉めた。それを見計らって、清掃業者がドアを開けて入ってくる音がした。彼らはひと言もしゃべらず、三十分ほど作業をして出て行った。一週間分の食料が補充されており、先ほどまで郁美が外貨トレードをしていた書斎も見違えるようにピカピカになっていた。トイレットペーパーや生理用品、タオルなども綺麗にパックされ、補充されている。ブー助は綺麗にトリミングされ、ポテチのカスが付着していた長いベタベタした毛足は美しくふわふわと盛り上がっていた。最近の清掃業者は魔法使いの資格を持っているに違いない。
翌日、郁美は念入りにシャワーを浴び、三年以上伸ばし放題だった腰まで届く髪を三回ずつ、シャンプーとリンスで洗った。腕毛やすね毛、脇毛を剃り、垢の詰まったツメを痛くなるまで短く切った。
プルルルル。郁美は音に飛び上がって、それから小走りでインターホンを確認した。宅配業者の制服、がっしりした体つき。昨日の男だ。今日は隣にカートがあり、大きな段ボールが二つ乗っている。郁美は通話ボタンを押し、男の「お荷物をお届けに参りました!」というハツラツとした低めの声を堪能し、無言で解錠した。
今日はおろしたてのスウェットを着ている。クローゼットには郁美のサイズのワンピースやシャツなどの服が一通り揃えられていたが、それを着た自分を確認する方法がない。夜を撤して迷った挙げ句、格好を付けて恥をかくよりも、自然体であることをアピールした方がいいと判断した。
ピンポーン。
郁美は玄関でマスクを装着し、覗き穴を確認してドアを開けた。郁美はその輝くような笑顔を見た途端、サッと顔を伏せた。見たいのに、どうやってももう一度顔を上げることが出来ない。
「お荷物です。こちらにサインをお願いします」
郁美はまたボールペンを受け取り、男のにおいを音がしないようにゆっくりと吸い込みながら丁寧にサインをした。
「ちょっと重いので、中に運びましょうか?」
郁美は「お願いします」と頷いた。今日の荷物はミネラルウォーター四ケースだ。男は「失礼します」とカートを押して玄関に入った。玄関のドアが締まる。
男は二リットルペットボトル六本入りの箱二つがまとめられた段ボールを軽々と持ち上げた。「どちらに置きましょうか?」郁美はドギマギしながら男を招き入れ、リビングまで誘導した。「すごく広いお部屋ですね」男は所定の場所に段ボールをおろし、感嘆の声を上げた。郁美は首をすくめた。男は「お一人でお住まいなんですか?」と続ける。
清掃業者と郁美以外の人間が珍しいのか、ブー助が音もなくやって来て、少し離れたところから男を注視した。
「おっと、猫さんがご一緒でしたか。失礼」と男は相好を崩してしゃがみ、ブー助と目線を合わせた。「キミ、すごく大きいな」
「メインクーンですか?」男は振り返って郁美に尋ねた。
男の後ろ姿をうっとりと視姦していた郁美は驚き、声が裏返った。「は、はいッ」
自分が視姦されていたとも知らず、男は無邪気な笑顔を浮かべた。「僕もメインクーン飼ってるんですよ。カッコイイですよね。でっかくて、猫の王様って感じが良い。名前、なんて言うんですか?」男はブー助に手招きした。ブー助はそろそろと近寄った。
「えっと……」郁美は脳をフル回転させた。一般的な一人暮らしの三十路女はメス猫にどのような名前を付けるのが正解だろう。ふと、テレビでアイドル歌手が愛猫の名前を呼んで頬ずりしている映像が思い浮かんだ。「クッキーです」
ブー助がこちらを非難がましく見上げた。すまん。郁美は心の中で手を合わせた。しかしこんな歌舞伎役者顔負けのイケメンに、巨大なメス猫にブー助という名を付けて二人で暮らしているなどという痛々しい事実を告げることはできない。そしてその巨体故に持ち上げて頬ずりすることもできない。というか、太りすぎて郁美自身、しゃがむことができない。できない尽くしだ。「この世は金がすべて」と言った無責任なバカを引きずり出して騎乗位で背骨を粉砕骨折してやりたい。
「可愛い名前ですね」
男は手の届く距離まで近寄ってきたブー助の喉を男の長い指でそっと撫でながら「オス? メス?」と尋ねた。郁美は「メスです」と答えると、男は「クッキーさん、キミはとっても美人だね。よろしく」と言った。ブー助はごろごろと気持ち良さそうに声を上げた。今、ブー助と体を入れ替えられるなら寿命を半分にする悪魔の取引に乗ってもいい。
「おっと、ごめんなさい。勝手に触って」男はハッとした様子で立ち上がった。
「いえ、大丈夫です。ぶ、クッキーも喜んでますし……」郁美は目を泳がせた。
「ありがとうございます。僕、大の猫好きなんです。メインクーンだし、郁美さんとは趣味が合いそうな気がします」
自分の名前が男の口から出たことに驚き、郁美は耳が熱くなるのを感じた。しかしぎこちない笑顔を作って首をすくめることしかできない。
突然、男が郁美の顔を覗き込んできた。目がバチッと合い、郁美はサッと顔を逸らした。
「あの、ちょっとマスクを取ってくれませんか?」
郁美は驚いて男を見上げた。男は精悍な笑顔を浮かべている。バックにあるはずのない花が咲いて見える。
「な、なんでですか」
「いえ、郁美さんのお顔、見せていただきたくて。少しでいいんです」
「イヤですっ」郁美は声を裏返らせて一歩下がった。
男は少し眉尻を下げ、残念そうな顔をした。「ダメですか? 一度だけで良いんです」
「わたし、あの。ブスなので」郁美は震える声で言った。意味不明の涙がボロボロと溢れてきたことに驚愕した。唐突な豚女の涙ほどイケメンをドン引きさせる兵器はない。はい終わったはコレ。なんなのマジで。ここ十年くらいお留守だったから存在すら忘れてたのに、なんでいま出てくんの。
「ええ、それはマスクをしていてもわかります」男は郁美の涙など露ほども気にしない様子で、あっさりと言った。郁美は驚いた。驚きすぎて涙も止まった。「え、いま、なんて?」
「あなたがブスなのは今の状態でもわかります。その離れすぎた小粒な目とか。でも、それが良いんです。是非、残りのパーツも見せてくれませんか」
郁美はわなわなと怒りに震える自分を抑えることができなかった。「いやです」
「じゃあ、付き合って下さい」
郁美は驚いた。驚きすぎて怒りの震えも止まった。「え、いま、なんて?」
「僕、いや、オレと付き合って下さい。恋人、いないでしょ?」
「……いない」
「じゃあ、オーケー?」
「……オーケー」
「やった! 嬉しいな。今日はいい日だ」男は少年のように無邪気に微笑んだ。そしてダランとぶら下がっていた郁美のハムみたいな両手を握った。
美しい世界
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴った。郁美は先週と同じく、スウェットの上下を着ている。清掃業者はつい先刻引き上げていったばかりなので、家もブー助もピカピカだった。もちろん、郁美自身も念入りに剃毛し、ピカピカだ。饐えたにおいもしない。マスクも付けていない。そして、家中にしかけた隠しカメラも全て正常に起動している。
「やあ、お邪魔します」
男の名前は一翔(いちと)。宅配業者の制服ではなく、黒のタートルネックにコットンパンツ、薄手のコートを羽織っていた。シンプルながらも洗練された感じで、よく似合っていた。制服の時は気が付かなかったが、相当鍛えているらしくたくましい腕や太もも、引き締まった腹はあまりに管理が行き届いており、郁美を惑わすよりも萎縮させた。
「やあ、クッキーさんも。久しぶりだね」
ブー助はいそいそとしっぽを立てて玄関までお出迎えに来た。気のせいか、一翔を見上げる表情がキラキラして嬉しそうに見える。ブー助のくせに、”さん” 付けされたくらいでチョーシ乗ってんじゃねーぞ。郁美は密かにライバル心を燃やした。
今日は付き合い始めて三度目の来訪だ。外食に誘われたが郁美が外出を頑なに拒否したため、しばらくは家に来て一緒に過ごすデートをすることになった。彼が料理を作り、二人で食事をし、少しコーヒーを飲んでテレビを見たりゲームをして、十時頃になると一翔は帰っていった。幼稚園で動画発表することも可能な、健全な大人のお付き合いである。
一翔はスーパーの袋を両手に下げたまま、革靴を脱いだ。年期は入っているが、一翔の肉体と同じくよく手入れされている。
「今日はポテトグラタンにしよう。好きなんだよね?」
一翔が眩しい笑顔を向けてきたので郁美はさっと俯いて、それから「はい」と言った。
「もう三度目だけど、まだ慣れない?」
「ええと……まぁ、あまり」と郁美は要領を得ない返事しかできない自分に悄然としたが、一翔は特に気にする様子もなく「ま、マスクを取って出迎えてくれただけでも、オレは嬉しいよ」と続けた。
一翔は実に手際よくポーゲンポールのシステムキッチンを使いこなし、ポテトグラタン、ムール貝とズッキーニとトマトのワイン蒸し、牛フィレ肉の香草焼き、桜鯛のわさびカルパッチョを作り上げた。郁美も芋を切ったり調理器具を用意して手伝ったが、手伝わなかった方がスムーズだったかもしれないねと言われれば、そうですねと返すしかない。
ブー助はふかふかの体を一翔の右足にこすりつけ、文字通りすり寄った。自分もまっ白な体毛に覆われていれば、あれくらい大胆に行動できるかもしれない。郁美はわたがしのような白いしっぽを羨望の眼差しで見つめた。
一翔はそれをくすぐったがりながらも、鯛を二、三切れブー助に与えた。ブー助は主人を完全に一翔に乗り換えたらしく、郁美がキッチンから出そうとすると毛を逆立てて威嚇する始末だった。そのようにして、郁美と一翔とブー助は、料理をしながら平和な時間を過ごした。そして今日で最後になるかもしれないその非日常的な平和な時間は、全て大切に、あらゆる角度から記録されている。郁美はこの思い出を糧に一生を生きていく覚悟だった。
「あの、一翔さん。そろそろ教えて欲しいんですけど」郁美はワインをぐいっと呷ってから切り出した。「目的はなんですか?」
「目的?」一翔はポテトグラタンを頬張りながら眉を上げた。
「はい。正直に言って下さい。その方がわたしも傷つかないし、一翔さんにとっても時間の短縮になると思うんです」
「何を言っているのか、よくわからないんだけど」
一翔は大きな目で郁美を真正面から見つめた。ものすごい威圧感がある。郁美は怯えた。
「あなたみたいな、その、魅力的な男性が……わたしと付き合いたいって言う場合は大抵はお金目当てじゃないですか」
ああ、と一翔は口角を上げた。それから中腰になってムール貝を取った。「もしかして過去にだまされてお金を取られたことがあるとか? だとしたら妬けるな」
郁美は俯いた。喜ぶな、バカ。
「いえ、そんなことはないんですけど」
「じゃあ何で? オレは郁美が好きだって言わなかったっけ」
郁美は笑顔を抑えられない。言葉だけでも嬉しい。しかし傷つくのが怖い。
「言いましたけど……でも信じられません」
「だからこうして、時間を掛けて少しずつ信じてもらおうとしてるんだけど」
「あの。お金が欲しいんだったら言い値でお渡しします。それだけの幸せをわたしはもらいましたし」
「まず、敬語をそろそろやめてほしいな」一翔は遮った。「あと、誤解があるようだから言っておくけど、オレは別に金に困ってない。宅急便のバイトは、まぁ、趣味みたいなものだよ。本業は頭脳労働だから、たまには体を動かしたいんだ。それに色んな人と出会える。郁美のような素敵な女性にも」
「そ、そうなんで……そうなんだ」郁美は空のグラスにワインを注ぎ足した。「本業は何を?」
「会社を経営してる。大した規模じゃないけどね。BtoBで、企業の基幹業務システムを完全カスタマイズで構築するのがメイン事業。一時期、結構雑誌に載った時期もあるんだけど、知らない?」一翔は聞き覚えのあるIT企業の名前を口にした。
道理で、身なりや料理の腕前、声の出し方、細かな所作が洗練されているわけだ。郁美は納得した。
「知ってま……知ってる」
一翔は苦笑いを浮かべた。「ホームページにオレの写真も名前も出てるから、疑わしいなら見てみれば良い」
「いえ、信じます。でも、だとしたら余計にわからない。地位も金も権力もルックスも持っていて女なんて選び放題のあなたが、どうして引きこもりの豚女の家に来て甲斐甲斐しく料理を作ったりするの? 遊びなら、本当にやめて。わたし、あなたを殺して自殺しかねないから」
ははっ、と一翔は白い歯を見せた。「面白いね、郁美は」
「本気だから」
「オレも本気だよ。郁美が遊ばれたって感じたなら、オレを殺して自殺すればいい」一翔は堂々としている。
「わたしのどこがそんなに良いの?」
一翔は食べ終わったムール貝の殻を皿の端に寄せた。それが少し乱暴な動作に見え、郁美は怯えた。「見た目。何度も言っただろ、一目惚れだって」
「あなた、デブ専?」
「そう。それに一般的にはブスって言われている女性も大好きだ」
「どうして?」
「そんなの、理由なんてないさ。好きだから。中でも郁美は群を抜いてる。その小さくて卑しい目、すげー出っ張った頬骨、ぺちゃんこの鼻にガタガタの歯並び。肌はにきび跡でぼこぼこだし、顔は歪んで全体的に左右非対称だ。しかも太っていて、デートだと言うのに頑なにスウェットしか着ない。完璧だ」一翔はうっとりとした目で郁美の顔を眺めた。
「そんなに酷い?」
「ああ、すごく酷い。同じ人間とは思えない。モンスターだ……あぁ、もう我慢できない。郁美」そう言って一翔は身を乗り出し、郁美にキスをした。
柔らかい唇の感触。しかし郁美の唇はいつも皮をむいているからガサガサだ。郁美はそのことが気になって一翔を押しのけた。身体中の穴から体液が吹き出す。剃ったばかりの脇が汗でビショビショになっているのを感じる。
「ごめん」一翔はしゅんとしてイスに座り直した。「嫌だった?」
「嫌じゃない。でも、あなたが嫌かもって。わたし、唇を剥く癖があってガサガサだし」
「オレが嫌かもって? そんな風に見えたか」一翔はイライラした様子で言った。郁美が謝ると、深呼吸をした。
「ごめん。でも、嫌ならキスなんかするわけないだろ。それくらいわかってくれ」
郁美はもう一度謝った。
「プールで泳ごう」と、一翔が唐突に提案した。
エスプレッソマシンで淹れた食後のコーヒーを飲み終え、郁美と一翔はテレビゲームに興じていた。ハイグラフィックなレースゲームで、荒廃した近未来都市やジャングル、ショッピングモール内などを好みの車で走り抜けるものだ。かなりやり込んでいたゲームにも関わらず、郁美は一翔に一勝もできなかった。わたしがヘタクソ過ぎてうんざりしたのかもしれない。
「無理」
「どうして? 水着を持って、少しの間エレベータに乗るだけだ」
このマンションにはジムやプールがついているが、そんな場所に出向くことなど郁美には不可能だった。あそこには金持ちの美女と金持ちの美男しかいない。そんな場所に醜い白豚(一翔曰く同じ人間とは思えないモンスター)がのしのし出向いたところで、悲鳴を上げて逃げられるか麻酔銃で打たれるかが関の山だ。
郁美が黙り込んでいると、一翔はそっと腕を回して肩を抱き寄せた。頬に一翔のたくましい胸板の感触があり、同時に香水の蠱惑的なにおいがして、郁美の心臓は止まった。
「郁美は全然、外に出ないの?」
郁美はその少しトーンダウンした口調に慌てて息を吹き返し、やっとのことで「ええ」と言った。つむじに一翔の息を感じる。頭は念入りに洗ったはずだが大丈夫だろうか。郁美は大量の汗をかいている。大丈夫なはずがなかった。しかし今更どうすることもできない。そうだ、プールに入ればいいんだ。いや待て。プールはマズい。モンスターとイケメンIT長者がプールでイチャついているのを万が一マンションの住人に発見されでもしたら、本当に警察沙汰になりかねない。おまわりさん、大変です。住人のイケメンIT長者がモンスターに襲われています。
「大丈夫」という一翔の声でハッと我に返る。「今の時間なら、誰もいないよ」
そうなのだろうか? 郁美はプールに出向いたこともないのでよくわからない。
「なんでそんなことが言えるの?」
「オレも、このマンションの住人だから」郁美はバッと顔を上げた。下から見ても美しい。違う、そうじゃない。「え? なんて」
「だから、オレもこのマンションに住んでるから知っているんだ。この時間にプールを利用する住人はほとんどいない」
「このマンションに住んでるの?」郁美はつい声を大きくした。
「はは、郁美のそんな大きな声、初めて聞いたな」
「何号室?」
「ここの隣」
マジか。それはマズい。昨晩、一翔に会える喜びに任せて大声でウルフルズの「バンザイ」を熱唱していたのを聞かれたかもしれない。いや大丈夫だろう。このマンションは防音はしっかりしている。しかし今後はバラードにしよう。
「なんで言ってくれなかったの」郁美は卑しい目をつり上げ、ますます見るに耐えない顔を作った。一翔はその顔を眺め、頬を愛おしげに指でなぞりながら「聞かれなかったから」と答えた。一翔がキッチンを使い慣れている理由がわかった。しかし本当に信じられない。ドッキリだろうか? 以前、一人の男が生まれてからずっと盗撮し続けられ、それをテレビ番組が全世界の人に放送していたという恐ろしい映画を見たことを思い出した。
「じゃあ旅行に行こう」
郁美は首を傾げた。一翔の会話には往々にして脈絡というものが欠如している。
「来週、ちょっと仕事で札幌に出張するから、ついでに向こうで観光しよう。うまい魚介を出す温泉宿を知ってるんだ。そこにしばらく泊まって」
「ちょっと待って。旅行なんて無理だってば」
一翔は肩をすくめた。「何が嫌なんだ?」
「外に出たくないの」「どうして?」「人に見られたくないの。わたしは醜いから」
一翔はああ、と納得した。「なら、人目に触れなければ良い」
「どうやって? 死体袋にでも積めて移送する気?」飛行機やタクシーに乗るくらいなら、その方が断然マシだった。
「それも良いけど、多分、空港の荷物検査で止められるし……そうだ。寝台特急カシオペアで行こう。個室はなかなか広いし、列車の旅も良いもんだよ。乗ったことはある?」
「ない」郁美は即答した。「でも、この部屋からカシオペアの個室までワープできないじゃない。だから無理」
「少しくらいは我慢してくれ。それに郁美だって、一生この部屋から出ないわけにはいかないだろ?」
「いえ、わたしは一生この部屋から出ないつもり。現にここ三年、一歩も部屋から出ないで生活してるし」
「郁美」一翔はもう片方の手を回して郁美を抱きしめた。「絶対に後悔させない。だから、旅行に行こう。ちょっとずつでも、外に出ることに慣れた方が良い」
郁美は涙ぐんだ。「部屋の外には、良いことなんて、何もない」
「オレと出会えたことは、良いことじゃない?」「ううん」郁美は首を振った。「わたしの人生で最高の出来事だった」間違いなく。
「オレは部屋の外からやってきた。オレ以外にも、郁美が心を許せるものが、世界には溢れているはずだ。それに、良くないことからはオレが全力で守るよ」
郁美は視界がにじんだ。人に愛されるとは、こういうことか。なんて暖かくて、幸せなんだろう。一翔は指で郁美の涙を拭い、唇にキスをした。
札幌までのルートはこうだ。まず、人のいない平日昼過ぎの時間帯を見計らって一緒にマンションの部屋を出る。郁美はマスク、マフラー、帽子、サングラスで完全に顔を隠すことでなんとか承諾した。そのままエレベータで駐車場まで直行し、側面のガラスをマジックミラーに加工した一翔のアルファロメオで上野駅に向かう。カシオペアの発車時刻まではドライブして時間を潰す。そこからカシオペアの個室まで歩く。ここが最難関だ。個室についたら到着までは部屋を出ない。朝食などの必要なものは全て個室に持ってきてもらう手はずになっている。カシオペアが到着したら、駅構内を徒歩で突っ切り、駅に待機させてあるリムジンに乗って旅館に向かう。もちろん、運転手からは後部座席が見えないように工夫がなされている。旅館は札幌からかなり離れているということなので、都会の喧噪に悩まされることもない。
人ののろけ話ほどつまらないものはないので割愛するが、それは素晴らしい旅だった。郁美は男の車でドライブをするという夢に見ることすら忘れていた夢を実現し、寝台列車では一つのベッドで一翔の優しさに包まれて眠った。セックスはしていないが、一翔の固くなったものを尻に感じながら彼の低い声で紡がれる彼の子供の頃の話に耳を傾ける時間は、何者にも代え難い。徒歩で外界を移動する際も、明らかに怪しい風体の郁美を人々は奇異な目で見たが、指をさされて笑われたり警察に通報されたり石を投げられたりすることはなかった。旅館の個室に運ばれてきた懐石料理も、最高に素晴らしかった。
「どうだった? 意外と、平気そうだけど」
一翔はビールをコップに継ぎ足しながら、上機嫌に笑った。
「意外と、平気だった」
郁美は元気よく返事をした。心の底からの笑顔は何年ぶりだろう。
実際、拍子抜けしたくらいだった。思っていたほど、恐ろしいものじゃない。外界、恐るるに足らず。普通に呼吸も出来るし、突然モンスターにエンカウントしたりゾンビから全力疾走することもない。しかも、美しく力も強い恋人が守ってくれている。
一翔は嬉しそうに頷いた。
「来て、良かっただろ? ここ、夜は星が綺麗なんだ。今日は天気が良いからよく見えると思う」そう言って、鞄から双眼鏡を二つ、取り出し、部屋の電気を消した。窓の外はすでに真っ暗だった。暗闇に少しずつ目が慣れてくると、月明かりが眩しいほどに感じた。
窓の淵に腰掛け、郁美は双眼鏡で外を眺めた。窓の近くは少し温度が低く、肌寒く感じた。何も言っていないのに、一翔がそっと毛布を肩にかけてくれた。そして隣で一緒にくるまり、肩を抱き寄せた。
郁美は満天の星をひとつひとつ、双眼鏡で眺めながら思った。一翔が指を指して、一つずつ星座の説明をしてくれた。
世界は美しい。郁美は光がにじんだ星たちを眺めながら、生まれて初めて、そう思った。
仕事のトラブル
旅行は当初、二泊三日の予定だった。しかし一翔の希望で一週間に引き延ばされた。郁美は特に困らないし、むしろ望むところだったので快諾した。旅館での初日の夜、一翔はまた股間を固くさせながらも郁美に手を出してはこなかった。キスをして、やさしく体をなで回しただけだ。
二日目の早朝、郁美は一翔の声で目を覚ました。なにか、隣の部屋で電話をしているようだった。時刻は午前四時半。耳をそばだてていると、いくつかの単語を聞き取ることができた。カメラ……予定……壁……きん。声の調子から、一翔は苛立っているようだった。仕事の話にしては、時間が早すぎる。いくらIT企業でも、こんな時間から旅行中の社長に直接電話を繋がざるを得ないトラブルが発生するものだろうか。
一翔の声が聞こえなくなったので、郁美は目を閉じて眠ったフリを始めた。なんだろう、なにか嫌な胸騒ぎがする。
朝食が運ばれてきてテーブルに並べられる間、郁美は寝室に隠れていた。一翔は朝からずっとスマートフォンを手に何かを打ち込んでいる。仕事だと言っていたが、見たことのない険しい表情をしていた。
「仕事で、なにかトラブル?」郁美はおそるおそる尋ねた。
「ああ、まぁ」一翔は珍しく歯切れの悪い答え方をした。
「大変なのに、旅行を一週間に延長して大丈夫?」
「問題ないよ。オレは郁美と旅行を楽しみたいんだ。この機を逃すと、なかなか休みが取れそうもない」
郁美は違和感を覚えた。宅急便の仕事を趣味でやるくらいには、時間があったはずだ。しかし「そうなんだ」とぎこちなく笑うことしか出来なかった。なにか恐ろしい気がして、追求できない。
スマートフォンが鳴った。一翔がサッとテーブルに投げ出してあったスマートフォンを、素早く手に取った。しかし、発信元が見えた。見えてしまった。
「ごめん、ちょっと」と一翔はそそくさと廊下に出て行った。音を立てないようにドアを開けて廊下に首だけ出してみたが、姿は見えなかった。どうやら、部屋からかなり離れた場所まで行ったらしかった。
たくさんの小鉢が並んだテーブルに付き、郁美は冷たいオレンジジュースを一気に飲み干した。ちがう。見間違いだ。いや、見間違いじゃない。アレは女の名前だった。ひらがなで「みゆき」と表示されていた。みゆきって誰?
おかしい。何かがおかしい。
郁美は嫉妬で気が狂いそうになるのを深呼吸して抑えた。
物音がし、ハッと顔を上げた。一翔が戻ってきた。
「ごめん。トラブっちゃって」
「誰から?」
「え、会社だけど」
「女?」
「そうだけど、ただの部下だ」
「名前は?」
「聞いてどうする」
「良いじゃない。聞いたって」
「……折笠みゆき」
「名前で登録してるんだ? 部下なのに」
「見たのか」
「見えたの」
「別に良いだろう。オレは呼び名でしか登録しないんだ」
「名前で呼んでるの? 女の部下を?」
「そうだ」
「やめて」
「なあ郁美。これは会社のことだ。キミにどうこう指図される筋合いはない。それに何を誤解したのか知らないけど、みゆきはただの部下だ」
「旅行先で、別の女の名前を何度も呼ばないでよ」
「キミが問いつめるからだろう」
「わたしが悪いの?」
「百パーセント、キミが悪い」一翔は堂々と言い切った。
「……浮気じゃない?」郁美は涙ぐんだ。
「違うと言ってるだろ。旅行中に仕事の電話に出たのは悪かったけど、仕方ないんだ。わかってくれ」
「わかった。信じる」郁美は浴衣の袖で涙を拭った。
その夜、郁美は一翔と結ばれた。
一生分の幸せ
一週間後、郁美はブー助への手みやげに鮭の半生ふりかけを買って帰宅した。ブー助はペットホテルに預けていたので玄関から部屋に入った時、その広々とした空間に生き物は郁美だけだった。なんだか見知らぬ部屋に見える。ドライブ、寝台列車、恋人との天体観測、処女喪失、ブー助がいない部屋。なにもかもが初めてで、郁美はめまぐるしく変化する世界に圧倒されていた。
一翔は部屋に荷物を置いて、すぐに会社に向かわなければならないと言って部屋の前で別れた。本当に隣室に鍵を開けて入っていくのを見て、少し安心した。一翔は嘘をつかない。彼は正直な人間だ。
郁美は荷物を放り出して、リビングのソファに身を投げ出した。本当に、色んなことがあった。郁美は満足なため息をついた。いま死んでも、後悔はない。一生分の幸せを味わった気がする。
ペットホテルに電話して、ブー助を届けてもらおう。郁美は目を開けて天井を見上げた。
ふと、違和感を覚える。
天井、こんなだったかな?
郁美は大きな体を腕を使って起こした。よく見ると、壁もなんだか少し違う気がする。郁美はそろそろと壁紙を触った。うーん。
そう言えば、いつも目に付いていたスパゲッティのトマトソースがはねた跡が無くなっている。たしか、この辺りに点がポツポツ付いていたはずだった。それに、よく見るとブー助が昔引っ掻いて作った傷も、綺麗に消えている。清掃業者がいつの間にか張り替えたのだろうか。いや、そんな発注はしていない。彼らが魔法使いで、三十分間で壁紙を張り替えるのが物理的に可能だったとしても、家主に黙ってそんなことを勝手にするはずがない。
郁美は思い立ち、壁に掛けた絵に仕込んだカメラを取り出した。
パソコンに接続した。動くものが映ったり音がしたら起動し、一定時間撮影をするハイテク盗撮カメラだ。電源に接続しておけば、一ヵ月分の映像を取りだめすることが出来る優れもの。
一翔との甘美な思い出もしっかりと詰まっているはずだ。
ライブラリが表示され、郁美は戦慄した。
「なにこれ」
ライブラリは空だった。データゼロ。しかし、そんなはずはない。一翔の三度目の来訪前に、全てのカメラでテストをしたのだ。少なくとも、その時のテストデータは残っていないとおかしい。
郁美はエアコンの中、冷蔵庫の上、玄関の傘立て、寝室のカーテンの裏、トイレの換気扇、ぬいぐるみの中など、至る所に仕込んだカメラをチェックしながら、ひたひたと死神の足音のように近寄ってくる、一つの結論から逃れようとした。しかし頭は勝手に考えを進める。
郁美は宝石や現金など、金目のものはそもそも家に置いていない。
家にも荒らされた形跡はない。それどころか、ご丁寧に新しい壁紙に張り替えてくれている。
誰かが、旅行中に侵入し、カメラのデータを消したことは間違いない。
旅行は一翔が提案したものであり、当初二泊三日の予定だったが、一翔が延長を申し出たため一週間となった。
一翔の険しい表情、「みゆき」。たしか、早朝の電話では壁とか金とか言っていなかったか。
郁美の手はほとんど自動的に動き、合計六十個の小型カメラのライブラリを順にチェックしている。その一つに、複数の動画が残っているものがあった。どこに仕掛けたカメラだろう。
アングルを確認し、机に置いたガムのボトルケースに仕込んだカメラだとわかった。
旅行期間中のログを再生する。
十人の見知らぬ男たちが、壁を叩いたり、仕掛けたカメラを見つけ出したりしている映像だった。リーダー格らしき初老の、しかし体格の良い男が何やら指揮を執っている。男たちは統率の取れた兵士のようにきびきびと動き、やがてリビングの壁の一部に集まり、壁紙を剥がし始めた。
バラバラと柔らかい石膏が床に落ち、その下からコンクリートが露出している。一体この男たちは人の家で壁を破壊して何をしているのだろう。
郁美は解像度を変えて、壁を拡大してみた。よく見ると、途中から色が違う一面がある。灰色ではなく金色にみえる。郁美はあんぐりと口をひらいた。壁と金。一翔の電話にあったのは、どうやらこのことだったらしい。金塊は形も大きさも大型のタブレットくらいで、薄く平べったい形をしていた。
男たちは隠しカメラを探してデータを削除する班と、壁に埋め込まれた金塊を探して取り出す班の二つに分かれ、手際よく作業をした。男たちは発見した金のタイルを積み上げては持ち帰っていた。
そして昨日、つまり旅行の最終日には見る影もなくボロボロに掘り起こされた壁に石膏を塗り、上から壁紙を張り直す作業をし、引き上げていく姿が記録されていた。
郁美は脱力した。一翔の目的は金塊だったのか。どういう理由で自分の家の壁に金塊が埋まっていたのかは知らないし、知りたいとも思わなかった。ただ空虚な気持ちになった。
これを警察に提出したら、この男たちと一翔は捕まるだろう。少なくとも、無断で家に侵入し、壁紙を張り替えた罪には問える。あとは隠しカメラのデータを無断で消した罪。
バカらしい。
郁美はアーロンチェアに頭を預けた。そして、少し考えてからペットホテルに電話するのはやめ、包丁を持って隣室に向かった。
編集後記
「美しさ」の定義が違う世界を作ってみたくて、「ブス専のめちゃめちゃイイ男」を投入しました。彼の周りでは、ブスがブスをライバル視し、ブスはよりブスになろうと努力する世界が生まれます。
めちゃくちゃ「重い」感じにするか軽快なコメディ調にするか迷ったのですが、ネットなので読みやすい方がいいかなと思ってコメディにしてみました。
あと、当初はブス対ブスの対決とか面白いかなーと思っていたのですが、ちょっと長くなりすぎたので割愛。うーむ、ペース配分が難しい。
4件のコメント
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こんにちは矢戸と申します。通りすがり。
猫と宅急便のコメント。
全体的にデブ描写が秀逸。オチも面白い。
1.デブの描写がすっごいっすね。ブー助もデブか。
2.オノマトペが疑問。デブ描写は逆に皮肉になって、いい味を出している。びゅうびゅうはいらないかも。//www.raitonoveru.jp/howto/26a.html
3.小タイトルに名前を付けるようになりましたか。タイトルは8割明示、2割暗示。
4.饐えた体臭はレベルが高い漢字。表現は好きだけど。
5.地の文に会話が入り込む描写は結構好き。★「すみません」男は謝って片膝を折り、ペンを拾った。「ご、ごめんなさい」郁美は蚊の鳴くような声で言い、ペンを受け取った。大事にしましょう。パラグラムにおけるテンポも悪くない。
6.★郁美はバッと顔を上げ、マスクを拾って装着し、覗き穴を見た。この辺が少しわかりにくい。覗きの性癖でもあるのか、説明が欲しいかな?
7.★最近の清掃業者は魔法使いの資格を持っているに違いない。確かに30分でトリミングまでしてしまうのは魔法使いだと思う。実際魔法使っていたりでしてね。
8.三人称で書いているのはポイントが高い。ただ宅配便の男を指す時、「男」だけだと味気ない。一応世界には35億の男がいるのだから、もっと絞りたい。★男の名前は一翔(いちと)。とあるので、出すのが遅い。
9.ペットの名前やばいよね。×クッキー○ブー助
10.最近、横書き小説は行頭を一マス空けない代わりに、行間を開けるのもアリかな、と思ったりしてます。新人賞の応募とかはルールにうるさいと思うので、あくまですっぱく、行頭を一マス。会話の時が困るんだよね。
11.★四つのモニターに表示された外貨相場のグラフは問題なく推移し、郁美に一定の富をもたらしつづけている。キングも言っていたが、読者がなぜか気になるのは人物の職業だと。郁美はFXトレーダーかな?
12.キャスト妄想設定。郁美=渡辺直美、一翔=市川海老蔵かな? 妄想。
13.一翔が郁美にプールに行こうと提案するのがいい。その時の郁美の心理描写も面白い。白豚は面白い。
14.★そのままエレベータで駐車場まで直行し、側面のガラスをマジックミラーに加工した一翔のアルファロメオで上野駅に向かう。カシオペアの発車時刻まではドライブして時間を潰す。そこからカシオペアの個室まで歩く。=無駄に設定が細かいのがいい。固有名詞を使うと、具体的にイメージが湧き、楽しくなる。ただ小説だから、細かすぎる描写はうざくなる。キング作「小説作法」P202でのレストラン「パームトゥー」の描写が参考になります。
15.手みやげに鮭の半生ふりかけ。
16.デブ専の裏に、金塊あり。オチも面白い。
17.短編だと、この先どうなるの? がないのが短編の限界だったりする。
18.世にも奇妙な物語に「美人税」っていうのがあったけど、最後のオチで「美人を通り越して、平安時代の美に逆戻りした」がありました。あの時の主人公は佐々木希でしたが、それをブスに変えれば、ブス対ブスの対決が見れそう。
通りすがり失礼しました。
>矢戸だいはちさん
長文にもかかわらず、最後まで読んでもらえて嬉しいです。
自分でも読み返してからコメントを拝読させていただきました。描写でわかりにくいところは、ご指摘通り。
しばらく小説から離れていたのですが、また書いてみたい気持ちが湧いてきました。
ありがとうございます。
村上春樹さんが言っていましたが、もともと小説は面倒くさいものなのです。だからもっとリラックスして書いて見てください。自分で書いていて楽しいものを書くのがいいですね。ドフラミンゴみたいなイケイケを主人公にするのもいいし、銀さんみたいな侍を主人公にするのもいいです。
私は斉木楠雄のψ難(さいなん)とジョジョ、その他好きなものを足して混ぜた話みたいので、練習してみました。私は「1.5次創作」なんて言っています。
因みに、銀魂とワンピース、その他を足してみたら、「海賊と呼ばれた侍」みたいな話になりました。(´・ω・`)え、何それ。
創作の余地は無限ですね。
斉木楠雄は私も好きです。1.5次創作、面白そう。
あ、でも私は元のキャラが好きすぎて崩せないタイプの人なので、なんだかんだで同人誌みたいになっちゃいそうw